信仰の飛躍

ウィルソン 高度に発達した宗教は、すべて合理的な論述の体系を備えています。ちなみに、ここでいう高度に発達した宗教とは、その聖職者たちが、学究的な性向を身につけ、教義の解明と体系化への知的な構造を発達させ、自己批判の受容力を形成している宗教を指します。そうした合理的な論述の体系は、ときにはますます整頓された、合理的に行われる討論や探求の過程によって発展します。そうした過程で、教義の中心的な争点が矛盾を免れ、洗練され、整合されて、合理的な正当化への基礎的構造がもたらされるのです。
 しかし、このような傾向にもかかわらず、説明できない神秘的な要素は残ります。それを把握するためには、信者は“信仰の飛躍”を行い、精神を傾倒し、知性や経験の制約を棄て去り、中心的な原理・存在・遂行に自己を一体化させる、主観的精神を獲得することが求められます。そうした宗教的体系の核心にこそ、救済が見出されるとされるのです。
(『社会と宗教』より抜粋)